サスペンスとはまた違う切り口
タイトルからてっきり殺人事件の謎解きものかと思ったのですが、今作は少なくともいわゆる殺人事件とその犯人のストーリーのサスペンスとは少し毛色が違いました。
もっと、人の本質や人間関係の儚さ、腹黒さ、ネットや週刊誌の無責任さといった、現代社会を色濃く反映し、そういったものに異議を唱えたいような意図を感じました。
なので、サスペンス物と期待して読んでしまうと、少し違和感を感じるかもしれません。
白ゆき姫殺人事件 [ 湊かなえ ]
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インタビュー形式
本作は、最初から最後まで関係者へのインタビューをそのまま文章におこしたようなスタイルです。
聞き手はすべて週刊誌の記者ですが、この記者さんについては「週刊誌の記者」という属性以外、心情や周囲の環境などの情報は一切出てきません。
白ゆき姫殺人事件
とあるOLが数か所を刺された上に火をつけられて殺されたのが発見されることから物語が始まります。
センセーショナルな殺され方で世間的な注目も大きく、「白ゆき姫殺人事件」とキャッチーな事件名まで付けられ、同じ会社に勤務する「Sさん」とされる女性社員が、あたかも殺人犯のようにネットや週刊誌で取り上げられます。
今でいう、「炎上」ってやつですね。
自分よりきれいな被害者を恨んでいたに違いない
昔から怪しかったからあの子ならやりかねない
好きな人をとられた失恋の恨みで殺したんだ
などなどと、記者のインタビューを通じて、あたかもその人の話が全て真実であるかのように取り上げられて大きく報道されていく怖さや危うさなどを前面に出していました。
人と人との関係ってむなしいなって。
1日の約半分を過ごす会社の人は一人も「Sさん」をかばわないし、それどころか会社の窃盗事件もすべてその人のせい。
両親も「あの子ならやりかねない」と最後まで信じてあげることはできず。
しかも、今の時代全然ありそうだから余計いやーな感じがしました。
感想
「犯人は誰だ」
「どんなトリックを使ったんだ」
って楽しむサスペンスとは違って、「Sさん」について話す人たちの林の内容がどこまでホントなのか。人に対して疑心暗鬼になりながら読む作品でした(笑)
あと、被害者も「白ゆき姫」と言われつつなかなかのビッチだったけど、なんかこんな感じの女たくさんいるなーなんて思ったりもした。
別に、目新しい感じでもなく普通にいそうなのが逆に怖いというか、なんかそういうのも普通にいるものだとあまり違和感すら感じなかった自分が世に染まってるのかな。
まぁ、社会人になって8年だし、そりゃ色んな人にも会いましたね(笑)
私は湊かなえ作品を読み続けているわけではないので、あまり評価としてはよくわからないけど、こういうスタイルの小説も面白くてよい試みだと思いました。
でも、Amasonのレビューは低めだったので、この人の作品をずっと読んでいる読者には違和感を与えるような内容だったのかもしれません。
ストーリーの後味はまったくよくないです(笑)
でも、結構あっさり数時間で読めちゃいます。
あと、本編の資料として後ろにくっついてる新聞記事や雑誌記事、インターネット投稿も読まないと、私は最後まで理解できませんでした(ほかの人は読まなくても全部わかったかもしれないです(;・∀・))
この作品たしか去年くらいに映画化されたような・・・
原作に忠実に作ったのかな?見てないから気になる・・・
てか「Sさん」は井上真央ちゃんが演じたらしいけど、ちょっとキレイすぎる気が・・・。