今回ご紹介する一冊、『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』ですが、私が今までの人生で読んできた実用書の中でもトップクラスに面白い、イチオシの本です!
ビジネスパーソンはもちろん、学生さんやパート・アルバイトさんといった全ての人の役に立つことは間違いありません。
私は、特に子供の頃、"失敗すること=怖くて恥ずかしい、ネガティブなこと"ととらえていて、引っ込み思案な性格も重なり、教科書を持ってくるのを忘れてしまったことすら言い出せず、なんとか誤魔化そうとするような子供でした。。。
この本は、そんなネガティブなイメージの"失敗"に対する考え方を、180度変えてくれるだけでなく、その失敗をどのように活かしていくのかを具体的に学べる一冊。
昔のことわざで、"下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる"というものがありますが、まぐれで当たるのではなくて、外すたびに「次はもっとこうしよう」と少しずつ改善して、いつか当たるようになる、というのが本書の肝。
私の中で特に印象に残ったポイントをまとめたいと思います。
失敗から学び、失敗から改善を行うことが最善の策である
失敗をネガティブに捉えるのは、私だけではなく、世界中にもたくさんいるでしょう。
そうすると、何が起こるのか。
失敗を隠して、誤魔化して、なかったことにしようとします。
ですが、失敗は改善や成長のヒントが詰まった貴重な出来事なのです。
率先して失敗を改善につなげる仕組みを世界的に実践する産業として、本書でも航空業界がたびたび紹介されています。
一度事故や事故になりうる重大インシデントが発生すると、計測器やブラックボックスなど客観的証拠を洗い出して、その原因を解明し、二度と同じ過ちが起こらないよう、国や航空会社を超えてその改善策が実践されています。
この航空会社の取り組みは、私たちの生活でも実践することができます。
本書には、以下のようにとても分かりやすい例え話がありました。
ゴルフを例に考えてみよう。練習場で的に向かって打つときは、一回一回集中し、的の中心に近づくように少しずつ角度やストロークを調整していく。(略)
しかしまったく同じ練習を暗闇の中でやっていたとしたらどうだろう?10年がんばろうと100年続けようと、上達することはない。ボールがどこへ飛んでいったかわからないままでは、改善のしようがないからだ。何度売ってもボールは暗闇の中へ消えていく。改善するためのデータがなければ、次はもう少し右に、今度はもう少し強くとった試行錯誤は不可能だ。(本書P67)
失敗は誰にでもあります。
些細な失敗もあれば、人命や多額のお金を失うほどの大きな失敗もあります。
失敗そのものが悲劇なのではなく、それを繰り返さないために考え、改善策を講じることができないことこそが悲劇なのです。
失敗を認めることの難しさ
失敗を認める。失敗を報告する。失敗を検証する。
きっと、多くの人がそれが大切で重要なことだということに同意するでしょう。
しかし、いざ自分が失敗した立場になった時に、潔く失敗を認め、第三者に報告することはとても難しいことではないでしょうか。
本書でも、
- 担当事件の被疑者が、数年後新たな証拠で無罪が明らかになった検察官
- 患者のレントゲン写真から、病気を見落とす、または健康なのに病気と誤診してしまう医療従事者
- 将来の景気の予測を誤った経済学者
など、いわゆるエリートと呼ばれるような職業に就く人たちが、いざ失敗に直面したときに、失敗をかたくなに認めないケースを多々紹介しています。
失敗を認めると、自分のこれまでの功績や自分自身までも「間違っていた、ダメだった」と周囲に思われるような気がして怖い・・・という心理、自分もとてもよく分かります。
本書でも紹介されていましたが、古くはガリレオ・ガリレイが唱えた地動説も有名です。宗教関係者のみならず、多くの人が天動説を信じるなか、ガリレオは客観的証拠から地動説を唱えます。
いくら有力な証拠を突きつけられても、人々は自分が信じてきたことが間違っているとは認めず、逆にガリレオを異端審問にかけ、有罪に処してしまいました。
このように、昔から人間という生き物は、自分の失敗・過ちを素直に認めることがとても苦手なのです。
考えるよりもまずは行動!たくさん失敗した方が早く成長する
本書で、面白い実験が紹介されていました。
ある陶芸クラスの初日、生徒が2組に分けられ、一方は作品を「量」で評価し、もう一方は「質」で評価すると告げられた。量のグループは最終日に全作品を提出し、各自、総重量が50ポンド(約23キロ)なら「A」、40ポンド(約18キロ)なら「B」と評価される。質のグループは質のみによる評価なので、自分で最高だと思う作品をひとつ提出すればいい。
結果、面白い事実が明らかになった。全作品中最も「質」の高い作品を出したのは、「量」を求めたグループだったのだ。(略)
量のグループは、実際に作品を次から次へと作って試行錯誤を重ね、粘土の扱いもうまくなっていった。しかし質のグループは、最初から完璧な作品を作ろうとするあまり頭で考えることに時間をかけすぎてしまった。結局あとに残ったのは、壮大な理論と粘土の塊だった。
日本の会社は、この傾向が強いように感じます。
案件ごとに、いろいろな部署の担当者や課長・部長から、何重にもチェックを受けた上で承認を得る、いわゆる「稟議」。
失敗や誤りを未然に防ぐことのできるメリットがある反面、チェックに相当の時間がかかるし、事案の本質には影響しない、些末な指摘をいちいち修正する手間もかかります。
もちろん、案件の重要性次第では慎重な議論や意思決定も必要ですが、「まずはやってみる」「やってみて、そこから考える」というフットワークの軽さは、ビジネスでも私生活や趣味でも大切な姿勢です。
失敗をネガティブに捉える最大の要因=犯人探し
冒頭でも述べた通り、私自身、失敗が怖いし、失敗したくないと感じています。
おそらくその1番の要因なのは、「失敗すると周囲の人に怒られるし、失望される」と思っているから。
失敗に対して厳しい態度で臨んでも、何もプラスにならないと本書にも記載されていました。
叱責されたり厳しい罰を受けることを恐れ、失敗を隠蔽する体質に。
そうすると、せっかくの改善のきっかけが失われてしまいます。
また、失敗はたった一つの要因によって引き起こされるケースよりも、多くの要因が重なり引き起こされることが多く、単純に誰か・何かを責めても何も解決しないでしょう。
ミスや失敗に対してオープンで、積極的に改善につなげている例として、
- 航空業界(ニアミスを起こした場合も、10日以内に報告書を提出すれば処罰されることはない)
- トヨタ(組み立てラインでミスや問題が起こると、ラインを止めて原因を徹底的に分析し、再発防止策をとる)
- シアトル市内の病院(患者の害になり得るミスが発生したときに報告させる体制を整え、全米でトップクラスに安全な病院と評されるようになった)
といった実例が紹介されていました。
これらに共通するのは、
- 失敗を責めない
- 失敗を分析し、再発防止につなげている
- 失敗から得た教訓を、みんなで共有する
という仕組みを作り、組織全体で取り組んでいることです。
~ * ~ + ~ * ~ +
失敗に対する考え方や取り組み方は、会社などの組織だけでなく、個人にも役立ちます。
本書の第6章では、失敗を重ねることで成長し、その分野で大きな功績を残した人の例がいくつか挙げられていました。
この考え方は子育てにも活かせそう!子供が失敗しないようにしてあげることは、実は子供のためにはならないんだね。
私自身も、失敗を怖がらずにどんどんトライして失敗を重ねて成長していけるように仕事や私生活を過ごしていきたいと思います。