RIOの日記

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【ネタバレ感想】「天才作家の妻ー40年目の真実-」妻としてのプライドと愛情を繊細に描く

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アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたグレン・クローズ主演『天才作家の妻-40年目の真実-』を観てきました。

 

 

タイトルとポスターのおかげで、ジョーの成功の陰にある"秘密"は明らかでそれがこの作品の中心と思われがちですが、このストーリーの肝は、秘密の真相や暴露といったことよりも、妻の生き様とリアルな心情にあります。

まさに原題『The Wife』というタイトルがぴったりな作品でした。

 

私は、最初に映画を観たのですが、ジョーンの本心が理解できず、原作本も読んでしまいました。

 

あらすじ

現代文学の巨匠ジョゼフ(ジョナサン・プライス)と妻ジョーン(グレン・クローズ)のもとに、ノーベル文学賞受賞の吉報が届く。

ふたりは息子を伴い授賞式が行われるストックホルムを訪れるが、ジョゼフの経歴に疑惑を持つ記者ナサニエル(クリスチャン・スレーター)から夫婦の“秘密”について問われたジョーンは動揺を隠せない。

 

実は若い頃から豊かな文才に恵まれていたジョーンだったが、あることがきっかけで作家になる夢を諦めた過去があった。

そしてジョゼフとの結婚後、ジョーンは彼の“影”として、世界的な作家の成功を支えてきたのだ。

 

ずっと心の奥底に押しとどめていたジョゼフへの不満や怒りがジョーンの中でわき起こり、長年共に歩んできた夫婦の関係は崩壊へと向かう。

そして授賞式当日、彼女はこれまで通り慎ましく完璧な“天才作家の妻”を装うのか。それとも本当の人生を取り戻すために、衝撃的な“真実”を世に知らしめるのか……。

Filmarksの作品紹介ページより抜粋

 

ネタバレありの感想

 

冒頭で紹介した感想Twitterのとおりです。

 

「ジョーのこと、憎んでいたんじゃないの?なんで守ろうとしているの?」

 

ジョーだけが作者として脚光を浴びる。

作品の着想はジョーだけど、本を仕上げるほとんどの作業を自ら行い、その中でさらに家族に尽くしてきた。

なのに肝心のジョーは、次から次へと浮気を繰り返す一方で、自立心はなく、生活面はジョーンに頼りっぱなし。

 

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仕事の面は、100%ジョーンによる作品ではないのだから、ジョーンがゴーストライターとまでは言えないのかもしれない。

 

それでも結婚生活については、ジョーの度重なる女性関係での裏切りは、離婚の十分すぎる動機になるはず。

 

映画の中でも、授賞式前にジョーが若いカメラマンを口説いていたことが分かり、積年の怒りが爆発したジョーンは、ジョーに離婚を迫ります。

 

それに端を発した言い争いがよほどこたえたのか、ジョーは心臓発作を起こし、帰らぬ人となります。

 

ジョーの死がジョーンの心境に変化を与えたのか、あれほどジョーへの怒りに満ちていたジョーンは、態度を180度変えます。最後のフライトのシーンでは、ジョーへの妻としての愛情すら感じました。

 

そこがどうしても良く分からなかったので、原作本も読んでみました。

 

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本の中では、本妻・書き手として高いプライドを持つジョーンの光と影が繊細に描かれていました。

光とはつまり、必死でプライドを保とうとする意地や強さ、そして書き手としての才能であり、影とは、自らの選択を後悔し、他人を責めたり見下してしまうところだと感じました。

 

女流作家が成功する時代ではなかったというのは、事実だったのでしょう。しかし、ジョーンが自ら必死にそう思い込もうとしているようにも感じました。現に、原作の中では男性と対等に活躍する女性と会った時のジョーンの心境は次のように描写されていました。

 

こっち側にいるはずじゃなかった。そう叫び出したかった。私は今周りにいるほかの誰とも似ていない。むしろリーの傍らにいるべきだった。物騒で見知らぬこんな場所でもあんなふうに自身に満ちた振る舞いをしたかった。

 

私も、他人をサポートすることよりも自分で考えて行動したタイプなので、この気持ちはとても良く分かります。

実際、結婚した後も仕事に励み、アメリカ赴任のチャンスをGETしました。アメリカ赴任には主人を連れて行き、家のことをサポートしてもらうという、今の時代でも珍しい夫婦のカタチだと思います。

 

仕事を辞めて付いてきてくれた彼には感謝しかありません。

 

 

私が映画を見終わった後にも理解できなかった部分は、原作本の下記の文章を読んで、なんとなく理解できたような気がします。

 

私たちは長い歳月をかけて巨大なガラクタ市を作り上げたようなものだった。一緒に集めたものは驚くほど果てしない列をなす。でもどんな夫婦だってそんなものだろう。

 

結局、結婚してからの40年間という長い月日とそこでした経験が今のジョーンを作っていて、そこからジョーは切り離せない。家族であり、自分の一部のようなものでもあるジョーのことは、憎くても呆れていても、どこかに愛はあるのでしょう。

 

その一方で、「私の才能が枯れることはないから、いつの日かジョーと過ごした日を題材に、自分の思うように手を加えて作品として発表しても良いかもね。」という、したたかさや冷静さも持っています。

 

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理解できても共感まではしなかったのは、きっと私の妻として過ごした時間の短さと人生経験の少なさが原因だと思います。

 

この先、色々と辛いことを経験し乗り越えていくと、ジョーンのような強さが身につくのでしょうか。。。

 

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