2021年のアカデミー賞にもノミネートされた*1Netflixオリジナル映画『シカゴ7裁判』を鑑賞しました。
(c) 公式ウェブサイトより
「シカゴ・セブン(シカゴ7)」とは、1968年のシカゴ民主党大会で暴動を企てたとして起訴された7人の被告の呼称。
本作は、このシカゴ7の151日に及ぶ裁判をメインとしつつ、シカゴ7メンバーのそれぞれのメンバーがなんのために当日現場に集まり、問題となったシカゴ民主党大会の暴動で何が起こったのかを描いています。
概要だけ聞くと「少し小難しそう&重そう・・・」と感じる方も多いかもしれませんが、ところどころユーモアを取り入れたりと多くの人が親しみを持って鑑賞できる工夫がされていたので、当時の時代背景を十分理解していない私でも興味を持って楽しく観ることができました。
『シカゴ7裁判』
— Rio (@nami11star1) 2021年4月10日
裁判の様子と実際の暴動とを上手くリンクさせた描き方が良かった。今では信じがたい被告人の扱いとかも、実話ってことはホントなのかな、怖い…と思ってしまった。
この1ヶ月くらいで見た作品のうち、ベトナム戦争関係は3つ目。アメリカにとっての影響の大きさを再認識しました。 pic.twitter.com/gsFWlQ09uA
✔︎ 2021年のアカデミー賞ノミネート作品をチェックしたい。
✔︎ 1960〜1970年代のアメリカで実際に行われていた反戦運動に興味がある。
✔︎ 実話をベースにした映画作品が好き。
あらすじ、基本情報
1968年、シカゴで開かれた民主党全国大会。会場近くでは、ベトナム戦争に反対する市民や活動家たちが抗議デモのために集結。
当初は平和的に実施されるはずだったデモは徐々に激化していき、警察との間で激しい衝突へと発展。
デモの首謀者とされたアビー・ホフマン(サシャ・バロン・コーエン)、トム・ヘイデン(エディ・レッドメイン)ら7人の男<シカゴ・セブン>は、"暴動を煽った"罪で起訴されてしまい、歴史に悪名をとどろかせた《類を見ないほどの衝撃的な裁判》が幕を開けることに。
Filmarks作品紹介ページより引用
<基本情報>
- 原題:The Trial of the Chicago 7
- 上映時間:129分
- ジャンル:ドラマ、実話
- 監督:アーロン・ソーキン
ベトナム戦争、反戦運動。混乱の時代で行われた大統領選。
先日見終わった海外ドラマ『This Is Us』シーズン3でも、ベトナム戦争が一つ大きなカギとして描かれていました。
パッと思いつくだけでも、ベトナム戦争に関連した映画は数多く、ベトナム戦争がアメリカの歴史や文化に与えた影響の大きさが伺えます。
- ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書*2
- フォレスト・ガンプ
- 7月4日に生まれて
- グッドモーニング、ベトナム
- フルメタル・ジャケット
舞台となった1968年はアメリカ大統領選の活動が行われていた年。
それまでのリンドン・ジョンソン大統領が再選のための立候補断念を表明し、選挙戦の結果、共和党のニクソンが勝利を収めます。
リンドン・ジョンソン大統領については私自身も最近までほとんど知りませんでしたが、映画『LBJ ケネディの意志を継いだ男』でその半生を学ぶことができるのでオススメ🎵
『LBJ ケネディの意志を継いだ男』
— Rio (@nami11star1) 2021年3月23日
映画や本で良く取り上げられるケネディ元大統領とは違い、ジョンソン元大統領のことはほとんど知らなかったけれど、難しい時代と状況を切り拓く、剛腕でやり手な政治家だったんだなぁということが伝わりました。特に最後の演説シーンは胸が熱くなった! pic.twitter.com/2gQgClpiyh
ケネディが志半ばで暗殺されて実現できなかった公民権法を成立にこじつけた敏腕な政治家だったものの、ベトナム戦争への世論の強い反発にあい出馬を断念。
この『シカゴ7裁判』は、まさにそんな混沌とした時代の節目となりうる大事な大統領戦の真っ只中に起きた実際の出来事を描いています。
以下ネタバレが含まれますのでご注意ください。
真の問題は法廷の外にもあった?
この作品はタイトル通り、法廷が舞台。
法廷でのやりとりを通じながら、
- シカゴ7のメンバーそれぞれがシカゴに集まった目的や経緯
- 暴動やその前後でどんな会話や行動をしていたのか
を描いています。
(c) 公式ウェブサイトより
全米からも注目を浴びたこの裁判には、映画の中でも詳細に描写されていましたが多々問題がありました。
- 黒人の被告の担当弁護士が不在のまま裁判が進行してしまう
- 不規則発言を繰り返す黒人の被告に対して、椅子にロープで拘束して猿ぐつわをする
- 担当裁判官の思想に偏りがあった
特に上の2点は完全に人権問題があり、今の時代の感覚では少し信じがたい内容でもありますが、実際にアメリカの法廷で起こったということなのでびっくり。
(c) 公式ウェブサイトより
結局シカゴ・セブンの裁判は上訴審で完全に無罪となり、検察も再審を断念したそう。
本作はテーマがタイトル通り「裁判」なので第一審やその裁判官が問題であるという印象を持つ人も多そうですが、そもそもこのシカゴ・セブンが起訴されるに至ったのはもっと上層部の強い意向の結果だったのだし、そこをもっと問題視してもいいのではないかとも思いました。
(c) 公式ウェブサイトより
- そもそも担当検事は起訴自体に反対していたが、当時の司法庁長官が半ば強引に起訴にこぎつけた
- 問題となったシカゴでの民主党全国大会の暴動を当時担当していた前政権の司法庁長官は、「暴動に至った責任はシカゴ・セブンではなく警察にある」と結論づけていた
まぁ、第一審の裁判官もかなり問題ありだったのは間違いないけどね・・・
最後に・・・リーダーとしての言葉の重み
終盤、トム・ヘイデンが暴動の首謀者とされる証拠として集会での音声データが出てきます。
血が流れるなら、街中で血を流させろ!
トム・ヘイデンは、この発言は決して暴力的なことを煽る主旨ではなく、「これ以上僕らの血が流れるなら、街中で流させよう(=多くの人に、政府や警察機関の暴力を目撃させて問題提起をしよう)」という主旨だったと説明しています。
(c) 公式ウェブサイトより
だけど、トムの発言を真の意図まで読み取ったデモの参加者はどれだけいたのでしょうか。
この一連のシーンを見た時に、トランプ元大統領の発言によって一部の過激派がアメリカの国会議事堂を襲撃したという前代未聞の事件を思い出しました。
参考▶︎トランプ氏の発言が暴力を扇動したのか? 米議会襲撃 - BBCニュース
あの時もトランプ元大統領は「暴動を起こす意図はなかった」という言い訳をしていましたが、リーダー、多くの人に影響力を与える立場に人は、自分の言いたいことを言うだけではなく、その言葉が聞き手にどのように伝わりどういう影響を与えるのかということに配慮しなければいけないんだな、と思いました。
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1. 『ソウルフル・ワールド』
2. 『私というパズル』
3. 『ザ・ホワイトタイガー』