「Dear Evan Hansen, (親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」
という書き出しの、たった1枚の手紙が巻き起こす、ちょっぴりほろ苦くて心温まるストーリー。
そんな話題のミュージカル映画を見てきました。
0歳児育児もあり、劇場で見るのは今年2作目。
(c) 公式サイトより
SNSが必須ツールとなった現代のティーンを主役にし、孤独に大きな焦点が当てられているけれど、だからこそ人とのつながりや愛というポジティブなメッセージを強く感じました。
『ディア・エヴァン・ハンセン』
— Rio (@nami11star1) 2021年12月5日
孤独とか死とか、重い要素が多かったけど、作品の雰囲気も劇中歌も前向きで明るくて、観終わった時も晴れやかな気持ちになれた。
エヴァンとコナーのお母さんが、対照的だけどどちらも息子への愛に溢れてて印象的でした🥰 pic.twitter.com/tfELU0lvlN
アメリカ滞在中に、ブロードウェイでとても人気で、ずーっと気になっていたミュージカルが原作。
残念ながらミュージカルは見ることが出来なかったけれど、映画化された本作で主演を務めたベン・プラットはミュージカルの舞台でも主役のエヴァン・ハンセンを演じていたとのことで、本場のミュージカルに近い作品を見ることができたのかな、と思います。
<こんな人に特にオススメ>
- ミュージカル作品が好き
- 10代〜20代の若い世代
- 子育て中の人
- SNSに疲れている人
あらすじ・基本情報
エヴァン・ハンセンは学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいる。
ある日、自分宛に書いた"Dear Evan Hansen (親愛なるエヴァン・ハンセンへ)"から始まる手紙を、図らずも同級生のコナーに持ち去られてしまう。
後日、校長から呼び出されたエヴァンは、コナーが自ら命を絶った事を知らされる。悲しみに暮れるコナーの両親は、手紙を見つけ息子とエヴァンが親友だったと思い込む。彼らをこれ以上苦しめたくないエヴァンは思わず話を合わせてしまう。そして促されるままに語った"ありもしないコナーとの思い出"は人々の心を打ち、SNSを通じて世界中に広がり、彼の人生は大きく動き出すー。
Filmarkより引用
ミュージカルというと、歌って踊るシーンがイメージされやすいけれど、本作はキャラクターの心情やセリフをメロディに乗せて表現する、と言うのが正確で、踊るシーンはないので、より作品のストーリーや世界観に入り込みやすいかもしれません。
特に一曲目の"Waving Through A Window"が良かった♪
曲調は明るくて「これから作品が始まるぞ!」という感じなんだけど、歌詞はうじうじ悩んでしまう複雑な胸の内がリアルで・・・
私も特に子供の時は内気なタイプだったから、すごく歌詞に共感してしまいます。
◆基本情報◇
- 原題:Dear Evan Hansen
- 上映時間:131分
- 監督:スティーヴン・チョボスキー
- ジャンル:ミュージカル、ドラマ
以下、ネタバレが含まれますのでご注意ください。
10代ならではの孤独や悩みがリアル
私自身も10代を過ごしてきたし、色々と考えて悩んで苦しんできたけれど。
いざ30代になると、当時の葛藤は遠い昔の記憶でどこか他人事・・・
友達と呼べるほど仲の良い子がいない・・・
母親が仕事ばかりで寂しい・・・
出て行った父親が恋しい・・・
今思えばちっぽけに感じる悩みも、当時の私にとっては一大事。
(c) 公式サイトより
エヴァンと同じく私もシングルマザーの家庭え育ちました。
「母親が仕事をしなければ生活できないし、家にいないのは仕方がないこと。自分自身も良い子でいなければ」
そんな当時の気持ちが蘇り、見ていて胸がチクッとしました。
誰にも気にされず、自分が存在しないような孤独を感じる。
でも、あなたは一人じゃない。
孤独感に苦しむ人を励ます劇中歌、"You Will Be Found"もお気に入りの一曲。
歌詞で描かれるエヴァンの気持ちはとてもリアルで、そして歌の持つメッセージが優しくてポジティブで、勇気づけられます。
先日、昨年は若者の自殺者数が多かったという悲しいニュースを目にしました。
若い世代の自殺増加、10~30代の死因1位に…コロナによる環境変化が一因か : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン
本作でも、コナーが自殺するという悲しい出来事に加え、エヴァンの折れた腕は事故ではなく自ら木から落ちた事による怪我だと告白するシーンがあり、絶望から自らを傷つけてしまう若者の姿が描かれています。
深刻なテーマで、登場人物が描く葛藤や悩みも暗いものなのに、作品自体はそんな雰囲気は全くなく、前向きでポジティブなプラスのパワーに溢れていました。
相手を傷つける道具にも、励ます道具にもなるSNS
今の子供は、SNSというツールが当たり前にあるから、日常生活を過ごすのも気を張ってばかりで大変そう。
お友達とのつながりを確かめ合う大事なものなのに、あまりに簡単に友情を断ち切りかねない、諸刃の剣のような。
SNSがきっかけで事件に巻き込まれて、傷ついたり命を落とすニュースも散見されます。
娘ちゃんにはあまりSNS使ってほしくはないけれど、、、時代的にそうはいかないだろうな。。。心配・・・
本作では、
- 相手の失敗を動画にとってアップする(結果的に、エヴァンのスピーチは感動的で多くの人を励ますことになりましたが、スピーチを始めた当初は、しどろもどろで話すエヴァンを面白おかしくからかうために動画を撮り始めた生徒が多かった・・・)
- 公開してほしくないコナーの遺書(実際にはエヴァンがセラピー用に自分宛に書いた手紙)を、ボタンひとつでSNSにアップしてしまい、思った以上に反響が大きくて投稿を削除しても遺書のデータが至る所に出回ってしまい収拾がつかなくなってしまう
- コナーの遺族を「金持ちのくせに・・・」と匿名で中傷する投稿が相次ぎ、コナーの自殺で傷ついた遺族をさらに傷つける
という、SNSやインターネット社会のマイナスの側面が描かれている一方で、
- SNSにアップされたエヴァンの感動的なスピーチを見た無関係の多くの人が、その言葉に勇気をもらい励まされる
- コナーを称えるために計画していたリンゴ園の立て直しに必要な多額の資金を、クラウドファンディングで募る
というプラスの効果も描かれています。
(c) 公式サイトより
便利だけど、とても簡単に取り返しのつかないような悪いこともできてしまうインターネットやSNS。
大人であっても、事件に巻き込まれたり訴訟に発展したりと、正しく使うのが難しいツールですね。
感想 - ベン・プラット歌うまい!そして母の気持ちに涙・・・
エヴァンを演じるベン・プラット、さすがの歌唱力と表現力。
トニー賞のパフォーマンス、ぜひ見て欲しいです・・・(o^^o)
ミュージカルは生パフォーマンスのライブ感がたまりませんね。
映画は緻密に計算された音響やカメラワークで、キャラクターの表情や歌声が繊細に描写されていて、ストーリーに入り込みやすい。
それぞれ、違った長所があります。
~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ *
そして、個人的に印象に残ったのはエヴァンとコナー、それぞれのお母さん。
エイミー・アダムスとジュリアン・ムーアという人気で実力派の女優さんがそれぞれ演じています。
(c) 公式サイトより
コナーの家は裕福で、お母さんが家で手作りの料理を作ったり色々と世話を焼いてくれる。一方エヴァンのお母さんは、シングルで看護師という忙しい職種ということもあり、なかなかエヴァンのそばにいれない。
私自身も、娘が1歳のうちから保育園に預けて仕事を始める予定。一緒にいる時間は育休中の今よりずっと少なくなって、娘には寂しい思いをさせてしまうだろうな・・・エヴァンのお母さんの歯がゆい気持ちと、エヴァンへの深い愛が痛いほどわかるので、とても切なく感じました。
あわせて読みたい
『13の理由』 - 10代の苦悩を描いたドラマ
『ソウルフル・ワールド』 - 音楽が印象的な一作。大人向けディズニー映画!