勝手に開催中の「アカデミー賞ノミネート作品たくさん見よう強化月間」の一環で、2021年アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた作品、『ウルフウォーカー』を鑑賞。
©︎公式ウェブサイトより
上映している映画館の数は少ないですが、Apple TV+で配信もされています。
アニメーションのタッチやストーリー、ところどころ垣間見れる社会問題ー。
すべての要素のバランスが良く、見てて楽しいし面白い、他にはないアニメーション作品でした。
『ウルフウォーカー』
— Rio (@nami11star1) 2021年3月26日
絵本のようなイラストかつ繊細でもあって、アニメーションにしかできない表現だなと思った。
考えさせられるような要素が散りばめられつつもストーリーとテーマはシンプルでとても楽しめたし、記憶に残る作品でした✨ pic.twitter.com/tkbINdQoBm
<こんな人にオススメ>
- アカデミー賞ノミネート作品をチェックしたい。
- 北欧の文化や雰囲気、歴史が好き。
- ファミリーで見られる映画をみたい。
あらすじ
1650年、アイルランドの町キルケニー。
イングランドからオオカミ退治の為にやってきたハンターを父に持つ少女ロビン。ある日、森で偶然友だちになったのは、人間とオオカミがひとつの体に共存し、魔法の力で傷を癒すヒーラーでもある “ウルフウォーカー”のメーヴだった。
メーヴは彼女の母がオオカミの姿で森を出ていったきり、戻らず心配でたまらないことをロビンにうちあける。母親のいない寂しさをよく知るロビンは、母親探しを手伝うことを約束する。翌日、森に行くことを禁じられ、父に連れていかれた調理場で、掃除の手伝いをしていたロビンは、メーヴの母らしきオオカミが檻に囚われていることを知る。
森は日々小さくなり、オオカミたちに残された時間はわずかだ。ロビンはなんとしてもメーヴの母を救い出し、オオカミ退治を止めなければならない。それはハンターである父ビルとの対立を意味していた。それでもロビンは自分の信じることをやり遂げようと決心する。そしてオオカミと人間との闘いが始まろうとしていた。
公式ウェブサイトより引用
<基本情報>
- 原題:Wolfwalkers
- 上映時間:103分
- 監督:トム・ムーア
以下ネタバレが含まれますのでご注意ください
対立と共存
ストーリーの大きなテーマの一つが人間と自然の対立だったと思いますが、それ以外にもたくさんの対立構造が見てとれました。
- 娘を守りたい父 VS ウルフウォーカーを守りたい娘
- イングランド VS アイルランド(キルケニー)
- キルケニーの街をコントロールしたい護国卿 VS 圧政に恐怖を感じるキルケニーの住人/側近たち
ただ本作ではこうした複雑な対立構造の描写にとどまることなく、利害が相反する両者が理解しあい歩み寄って共存し、さらには自らのアイデンティティに気付くことまで描いていたのが良かったと思います。
©︎公式ウェブサイトより
作品の舞台は中世、1650年のアイルランドですが、こうした対立構造は350年以上経った現代社会にも存在し、時に人間同士の対立を生んでいるように思います。
一人一人、育った環境も違えば理想や考え方も当然異なります。
異なる意見を持つ相手をかたくなに否定するのではなく、相手を理解する姿勢を持ち、相手の意見に耳を傾けて尊重すれば、自分自身の考えを磨き上げたり、時に自分自身を劇的に良く変えたりできるメリットがあるんだなと、この作品を見て思いました。
特に年齢を重ねれば重ねるほど、自分とは異なる意見を聞くとまるで自分の人生を否定されたような気持ちになってしまうこともあるので気をつけたいです。
ファミリーみんながそれぞれの視点で楽しめる作品
アニメーション作品なのでもちろんお子さんもとっつきやすく楽しめる作品になっていますが、大人が見ても感じることや学ぶことが多く楽しめます。
イングランドから派遣されたハンターの父を持つ主人公ロビンと、キルケニーの街の外れの森で暮らすウルフウォーカー・メーヴ。
出会った当初は真逆の立場で対立関係にありましたが、お互いを理解し合い、最後にあまるで本当の姉妹のような親友になります。
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2人のお互いを大切に思う気持ち、それぞれの親を思いやる気持ちはお子さんが作品を見ながら感じることや学ぶことが多いのではないかと思います。
また、ビル(ロビンの父)も子供と同じかそれ以上に変化し活躍します。
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ビルは護国卿お抱えのハンターとして、娘の安全を一番に願い護国卿の命令に忠実にしたがってきました。
私が一番印象に残っているシーンは、ビルがロビンに「護国卿の言うことを聞きなさい、さもなくば投獄されてしまうよ」と必死で諭すと、ロビンに「もう投獄されているも当然じゃない」と反論され、ハッと我に返る場面。
大人になると常識にとらわれて、冷静に自分の置かれた状況を正常に判断できないことが多いように感じます。
ビルはそうして積み重ねた小さな気づきとロビンへの愛情のおかげで、
- ウルフ/ウルフウォーカー=悪、ではないこと
- 自分自身とロビンもまた敵視していたウルフウォーカーであること
というとても大切なことに気づきます。
©︎公式ウェブサイトより
こうしたビルの姿から私たち大人が学ぶことが多いですし、新しい気づきを与えてくれます。
イギリスとアイルランド
何度も同じようなことを言っているような気がしますが(笑)、映画を楽しむためにも歴史をもっともっとたくさん知りたいーー!!
歴史や背景事情を知って作品を見れば、何倍も楽しめると思うんですよね。
産休に入ったこともあり色々なジャンルの本を読んでいますが、まだまだ全然知識は追いついていません。。
『ウルフウォーカー』も、まさに実際のイングランドとアイルランドの歴史を知っていると、より深く楽しめる作品だったと思います。
調べてみると、イングランドとアイルランドはその歴史的背景ゆえに現在でも複雑な関係なんだそう。
日本と韓国や中国みたいな感じなのかな・・・
『ウルフウォーカー』の舞台となった1650年、実際の歴史上でもイングランドで清教徒革命が起き、イングランドとアイルランドの関係性に大きな影響を及ぼした時期でもあったようです。
護国卿が神に祈るシーンが多く出てきましたが、そうした歴史的背景を反映したのかもしれないですね。
▼参考:「図解 アイルランドの歴史」▼
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