2021年のアカデミー賞で複数部門にノミネートされた作品、『マ・レイニーのブラックボトム』を鑑賞。
©️公式ウェブサイトより
音楽がテーマの作品と思いきや、1927年のシカゴを舞台に、差別の中それぞれ苦悩しながら強く生きようとする黒人の姿を描いた作品でした。
ブラックパンサーでお馴染みのチャドウィック・ボーズマンの遺作でもあります。
その内容もさることながら、私が一番印象に残っているのは俳優陣の演技。
終始、登場人物たちの会話の多い会話劇のような内容でしたが、特にメインのマ・レイニーを演じたヴィオラ・デイヴィスと、レヴィーを演じたチャドウィック・ボーズマンの熱量ハンパない魂の演技で心が震えました。
『マ・レイニーのブラックボトム』 #Netflix
— Rio (@nami11star1) 2021年3月21日
ヴィオラ・デイヴィスとチャドウィック・ボーズマンの演技がとにかく魂震える素晴らしさで鳥肌立ちまくり。
音楽映画かと思いきや、1927年のシカゴを舞台に、差別の中で強く自分らしく生きようとする黒人たちを描いた社会的な内容でした。 pic.twitter.com/O1QCpY1O0v
<こんな人に特にオススメ>
- チャドウィック・ボーズマンが好き
- アカデミー賞ノミネート作品をチェックしたい
- 90分程度の短めの映画を見たい
あらすじ
1927年。情熱的で歯に衣着せぬブルース歌手マ・レイニーとバンドメンバーたちの想いが熱くぶつかり、シカゴの録音スタジオは緊張した雰囲気に包まれる。
NETFLIX作品紹介ページより引用
2021年のアカデミー賞に5部門ノミネート。
- 主演男優賞
- 主演女優賞
- 美術賞
- 衣装デザイン賞
- メイクアップ&ヘアスタイリング賞
<基本情報>
- 原題:Ma Rainey's Black Bottom
- 上映時間:94分
- ジャンル:実話、ドラマ
- 監督:ジョージ・C・ウルフ
Ma Rainey's Black Bottom | Official Music
以下ネタバレが含まれますのでご注意ください
ヴィオラ・デイヴィスとチャドウィック・ボーズマンの熱い演技に感動!
アカデミー賞の主演女優賞・主演男優賞にそれぞれノミネートされたことからもわかるように、メインの2人の熱い演技にただただ圧倒されます。
©️公式ウェブサイトより
まだまだ差別が根強く残る1927年。
しかも舞台は白人が多い北部の都市、シカゴです。
マ・レイニーは歌手として成功していつつも、南部にいた時につうじた方法ではいつ潰されてもおかしくないという危機感を持って、「自分の意思・やり方を通すんだ」という強い意志を持っています。
時間を守らなかったり、「コーラを飲む」というマイルールを貫いたり、演奏のアレンジを全て決めたり。
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何気なく見るとわがままだと感じますが、白人社会で尊厳を維持しながら自分の地位を守っていくための彼女なりの意地なんだろうなぁ、と見てて思いました。
仕事に関しては強気なマ・レイニーですが、家族に対してはとても深い愛情と優しさを感じました。
吃音を持つ甥っ子に、自分のレコードの曲で口上を任せます。
何度言葉に詰まってしまっても、「何度でもやり直しはできるから、あなたのペースでやりなさい」と甥を信じ、成功するととても喜んでいました。
その対照的なシーンがとても印象に残っています。
©️公式ウェブサイトより
観賞後に、『マ・レイニーのブラックボトムが映画になるまで』という、本作の舞台裏をまとめたドキュメンタリーも見ましたが、マ・レイニーを演じたヴィオラ・デイヴィスの役作りの執念やプロ意識の高さをひしひしと感じます。
役について徹底的に調べ上げて、共演者いわく、細かい特徴や仕草などのメモをびっちり書き込み、台本はボロボロになるほどだったそう。
彼女の俳優というキャリアに対する熱い想いは、過去のアカデミー賞受賞スピーチでも強烈に印象に残っています。
このスピーチをリアルタイムで見ていて、これほど自らのキャリア、周囲の人、家族を愛して誇りに感じられる人生ってすごいなと思ったし、これほど心を動かされたスピーチは初めてでした。
▼2017年のアカデミー賞受賞スピーチ。「私たち俳優は、他の人の人生を生きることのできる唯一の職業で、私はその職に就けました、神に感謝します」
Viola Davis Oscars Acceptance Speech for 'Fences' | Oscars 2017
チャドウィック・ボーズマンが演じるレヴィーは、マ・レイニーのバンドメンバーの一員。自分の才能を強く信じているがために自己主張も強く、バックバンドの一員にもかかわらずマ・レイニーの指示に従った演奏をしたりバンドメンバーと合わせたりすることができず、マ・レイニーの反感を買ってしまいます。
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陽気で自信家のレヴィーですが、実は幼少期に白人グループに家族が母親が襲われてしまい、自分もナイフで体に消えない傷を負い、その復讐のために父は命を落としてしまいます。
そんなトラウマゆえに、「白人になめられないように生きる」といった必要以上の反骨精神を持ち、神様を恨むなど、少し精神的に不安定な様子を見せていました。
そうした複雑な内情を熱く力強く語るシーンがいくつもあるのですが、陽気な青年から一瞬にして狂気を感じさせるようなリアルな演技で、見ている側も少し背筋がゾクっとするほどでした。
主演男優賞ノミネートは納得ですし、これほど才能に溢れた俳優さんが命を落としてしまったことが残念でなりません。
黒人差別の複雑さ
本作の大きなテーマは黒人差別でしたが、今までの映画でもよく見たような「白人からひどい差別を受ける黒人」というシンプルな構図とはまた少し違い、黒人同士対立したり傷つけあってしまう場面が多く描かれていました。
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シカゴに暮らす黒人が、南部から来たマ・レイニーたちをよそもの扱いするような視線を送り、南部から移住してきた黒人が居心地悪く感じるようなシーンがありました。
また、マ・レイニーとレヴィーも同じバンドメンバーにいながら対立してしまいます。
マ・レイニーのバックバンドの一員でありながら、彼女の目指す音楽の表現ではなく自分の理想の音楽の表現に固執するレヴィーに対しマ・レイニーは苛立ちを覚え、最終的には彼を解雇します。
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「自由に音楽活動がしたいからクビは望むところだ」と笑顔で強気で発言していたレヴィーですが、クビを宣告されたあとは明らかに動揺していて、個人的にはそれが少し不思議でした。自分の音楽のセンスを理解してもらえず、追い出されたことがショックだったのかな・・・。
加えて、レヴィーとその他のバンドメンバー間にも摩擦が生じます。
レヴィーは過去のトラウマが原因で神を信じられず恨んでいましたが、それを他のメンバーにも異様なほど強引に押し付け、ナイフを振り回す・・・かなりクレイジー。
ただでさえ危険な状況のレヴィーは、バンドメンバーをクビにされ、完全に崩壊。
高額の靴を踏まれたというだけで、バンドメンバーを刺殺。。。
この事件も、原因の根本をたどるとレヴィー一家が白人から受けた暴力が原因ではありますが、その結果が黒人を傷つけるということに繋がってしまうのはあまりに悲しいです。
まとめ
90分ほどとコンパクトにまとまった映画ですが、
- 俳優陣の演技
- 当時の黒人社会の複雑さ
- マ・レイニーの痺れるパフォーマンス
と、見どころがたくさん詰まっています。
©️公式ウェブサイトより
戯曲を元にした作品なので登場人物のセリフも多く、少しクセのある作品かな、とは思いますが、多くの人に見ていただきたい、おすすめの作品です!
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