夢の国 ディズニーランド。
ミッキー、くまのプーさん、スティッチ、プリンセス・・・
世界最強のブランドと言っても過言ではない"ディズニー帝国"を率いるウォルト・ディズニー・カンパニー。
そのCEOを2005年秋から2020年頭まで務めたロバート・アイガー*1のキャリアを辿りながら、理想のリーダー像を学べる一冊がこの『ディズニーCEOが実践する10の原則』です。
また、アイガーがCEO時代に手掛けたピクサー、マーベル、ルーカス・フィルム、21世紀FOXの買収劇の裏話や経営の観点からの狙いなども、映画好きな私にとってはとても興味深いエピソードでした。
私もここ最近、昇格したり後輩の面倒をみる機会が増えたりと、あるべきリーダー像について意識することが増えてきました。世界一有名な企業を統べるCEOは、一体どんな人物なのか、組織や人を率いる時に、どんなポイントに気を付けているのか、とても参考になりました。
◎リーダーシップを学びたい
◎リーダーとしてのあり方、考え方を学びたい
◎過去15年間くらいのディズニー本社の内情を知りたい
◎マーベルやピクサー、ルーカスフィルムなどエンタメが好き
◎スティーヴ・ジョブスが好き、彼のエピソードを知りたい
1. 下っ端時代の経験が、リーダーの素質として役立つ!
"ディズニーの元CEO"と聞いて想像できないですが、アイガーはテレビ局の雑用係としてそのキャリアをスタートさせたそう。
寝る間もないほど多忙で給料も安い過酷な仕事ですが、そんな中でもアイガーがキャリアに役立った経験として、次の点を挙げています。
✓ 職場の多くの人と知り合えた
✓ 労働、特に過酷な仕事に耐える力を身につけた
✓ 早起きの習慣を身につけた
✓ メンター(お手本になる上司・先輩)に出逢えた
常に最高を追求する
アイガーは10の原則の1つとして「常に最高を追求すること」を掲げています。
彼がテレビ局のスポーツ部門に所属した際に、当時のボスから学んだ教訓だそうです。
ルーン*2の口癖は単純だった。「もっといいものを作るために必要なことをしろ」。ルーンから学んだ数多くの教訓の中でも、何より今の私を作ってくれたのはこの言葉だ。私はリーダーの大切な資質としていつも、「完璧への飽くなき追求」を挙げている。完璧の追求にもさまざまな意味があり、「これ」と特定するのは難しい。それは特定のルールというわけではなく、どちらかというと心構えに近い。
アイガーは本書でルーンについて多く言及していますが、ルーンは最高の番組を作るためにできることはすべて行い、納得しなければ放送直前でもひっくり返してゼロから作り直させる厳しい上司だったそう。
アイガーはさらに、常に最高を追求することを体現して感銘を受けたとして、日本の『二郎は鮨の夢を見る』というドキュメンタリー映画を挙げていました。アイガーは後日、ディズニーの社外研修で250人の重役に映像の抜粋を見せたほど、映画の内容を大変気に入ったそう。
どんな仕事も断らない
下積み時代のアイガーの言葉で私が一番共感したのが、「どんな仕事も断らない」ということです。
昔からずっと、どんな仕事のチャンスも頼まれたら拒まないのが私の信条だ。理由のひとつは単なる野心だろう。昇進して仕事を学び、もっと大きなことをしたかったし、そのためのチャンスを逃したくはなかった。だがもうひとつには、馴染みのないことでもやり遂げる力があるということを自分に証明したかったのだと思う。
どんな仕事でも自分の経験値が増えますし、人脈が広がったり信頼を得られたりとプラスの面が大きいので、私も積極的に仕事にトライすることを心がけています。本書を読んで、少し自信になりました。
大抜擢を受けてプレッシャーを感じても、"自分らしさ"を見失わない
アイガーは、ABCエンターテイメントのCEOに抜擢されたときの、右も左も分からない不安な心境と、そんな中で大切にした哲学を次のように語っています。
そんな状況に立たされたら、どうしたらいい?まずは、自分を偽らないことだ。謙虚に、誰かのふりをせず、自分が何を知らないかを知ることからはじめなければならない。とはいえ、リーダーの立場にいる限りは、へり下りすぎて周囲の人を導けないようではいけない。謙虚さと卑屈さはまったく違うし、その点は私がいつも諭していることだ。必要なことはきちんと聞き、理解できないことははっきりと認め、学ぶ必要のあることはしっかり努力してできるだけ早く学ぶこと。知ったかぶりは自信のなさを周囲に撒き散らしているようなものだ。本物のリーダーシップとは、自分が何者かを知り、誰かのふりをしないことなのだ。
「知ったかぶり」
正直、私個人には少し耳の痛い言葉です。
社歴やキャリアが長くなるにつれて、分からないことを素直に認めるのが難しいですが、背伸びしたり自分を偽ったりせず、謙虚な姿勢をいつまでも持ち続けられるようにしたいですね。
2. リーダーとしての経験を通じて学んだ教え
テレビ局でキャリアを重ねてきたアイガーは、所属するABC局がディズニーに買収され、その後ディズニー本社のCEOにまで上り詰めます。
本書には、トップに立つリーダーゆえの気苦労や難しさについても、実際のエピソードを交えて具体的・リアルに記載されていました。
敬意を払う
特に、ウォルト・ディズニーの甥であるロイ・ディズニーとの仲たがいのエピソードは興味深かったです。
ほんの少し敬意を払うだけで、信じられないようないいことが起きる。逆に、敬意を欠くと大きな損をする。その後の数年のあいだに、私たちはディズニーを生き返らせ、その姿を変えていくような大型買収を手がけることになる。その中で、「敬意を払う」という、一見些細でつまらないことが、どんなデータ分析にも負けて劣らず大切な決め手になった。敬意と共感を持って人に働きかけ、人を巻き込めば、不可能に思えることも現実になるのだ。
絶対どのコミュニティに行っても、嫌いな人や馬が合わない人っていますよね。
リーダーになるとそういう人とも上手くやっていかなければなりません。
相手も同じように思ってくれていれば話は楽ですが、たいてい相手は攻撃的だったりしてイラついて・・・
でも、そんな時も相手のペースに乗せられることなく、敬意を払って大人の対応をすることが大切ですね。特に、リーダーとしてある程度のポジションについているときには、余計これは難しく、大切なことかもしれません。
誠実であれ
アイガーは、本書の締めとしても10の原則のラストとしても、誠実さを挙げています。トップに立った者だからこそ、誠実で公平であることの大切さを身に染みて感じているのかもしれません。
どんな大人になっても、何を成し遂げても、その昔、物事が単純だった頃と同じ子供の自分がまだそこにいる。ある意味で、リーダーシップの基本もそこにあると私は思う。世界中から、権力者だ重要人物だと祭り上げられたとしても、本当の自分を見失わないことが、リーダーの本質だ。自分を過信しはじめた瞬間に、肩書に頼りはじめたその瞬間に、人は自分を見失ってしまう。
アイガー自身も、CEO時代に側近に対し、自身の言動に誠実さや公平さが欠けたときには遠慮なく指摘してほしいと頼んでいたそう。
自分を客観的に見つめることは難しいですもんね。
そんなエピソードからも、アイガーが誠実さ・公平さをいかに重要視していたかが分かります。
私はまだ大した肩書もない一社員ですが、今後運よく昇進できたとしても、ポジションに満足したりあぐらをかくような人間にならないように気を付けないといけないな、としみじみ感じました。
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