知念実希人さんの『ムゲンのi』を読みました。
上下巻あわせて700ページほどありますが、あまりに面白くて週末で一気に読了!
知念実希人さんの『ムゲンのi』上下を一気に #読了 📘💫
— Rio (@nami11star1) 2021年4月19日
登場人物たちの夢が織りなす幻想的でファンタジーな世界でのアドベンチャーと、現実に起こる殺人事件&主人公が遭遇した23年前の事件に絡むミステリーのミックスしたストーリーに引き込まれました🥰 https://t.co/8ac2Gfg4Yz pic.twitter.com/Spez0EGc6i
本の装丁のイラスト&色合いもファンタジー感溢れていますね。
私自身が今までファンタジーとミステリーが融合した世界観の本を読んだことがなかったのでとても新鮮に感じ、夢中になってしまいました!
✔︎ ミステリー小説が好き。
✔ ファンタジーな世界観/凄惨な殺人事件の描写に抵抗がない。
✔︎ 家族愛に関するストーリーが好き。
あらすじ
展開も結末も予測不可能な超大作ミステリー!!
若き女医は不思議な出会いに導かれ、人智を超える奇病と事件に挑む。
眠りから醒めない四人の患者、猟奇的連続殺人、少年Xの正体――
すべては繋がり、世界は一変する。
眠りから醒めない謎の病気〈特発性嗜眠症候群〉通称イレスという難病の患者を3人も同時に抱え、識名愛衣は戸惑っていた。
霊能力者である祖母の助言により、患者を目醒めさせるには、魂の救済〈マブイグミ〉をするしか方法はないと知る。
愛衣は祖母から受け継いだ力を使って患者の夢の世界に飛び込み、魂の分身〈うさぎ猫のククル〉と一緒にマブイグミに挑む――。
『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』
2年連続本屋大賞ノミネートの著者、最新作!
Amazon作品紹介ページより引用
ストーリーの軸はミステリーですが、あらすじの"霊能力者"、"マブイグミ"というワードからも伝わるとおり、ファンタジー要素がかなり強いのが特徴です。
そのため、ファンタジーものや非科学的な内容が苦手な方は少し違和感を覚えるかも。
また世界観はファンタジーですが、実際の殺人事件に関する描写は少しグロいなと感じる部分もあったので、苦手な人はご注意ください。
登場人物
識名愛衣
本作の主人公。通称イレスと呼ばれる病*1を発症した患者3名の主治医。
23年前に少年Xが起こした通り魔殺人事件に巻き込まれトラウマを負った過去を持つ。
霊能力者の祖母から受け継ぐパワーを使い、イレス患者を救うため"夢幻の世界"に飛び込む。
杉野華
愛衣と同じ病院に勤める先輩。
サバサバした性格で、愛衣の良き相談相手でもある。
イレス患者を1名担当。
袴田聡史
愛衣・華が勤める病院の院長で、幼い頃にトラウマを負った愛衣の主治医でもある。
最近事故にあったため車椅子生活を余儀なくされている。
片桐飛鳥
愛衣が担当するイレス患者の1名。
パイロットになる夢を叶える目前で不測の事故にあう。
その事故がきっかけで心に傷を負い、イレスを発症してしまう。
佃三郎
愛衣が担当するイレス患者。高齢の弁護士で主に冤罪事件を手がける。
世間を震撼させた殺人事件の容疑者の無実を信じ、二審から担当弁護士を引き受ける。
裁判の終結後、思いもよらぬ結末を迎え大きなショックを受け、イレスを発症。
加納環
愛衣が担当するイレス患者で、佃が弁護した容疑者の関係者。
佃と共に容疑者の無実を信じていたが、思いがけない事実にショックを受け、イレスを発症。
少年X
23年前に世間を震撼させた連続通り魔殺人事件の犯人。
犯行当時に未成年だったことから事件の詳細は報道されず、また少年法のため大した刑罰を受けることもなかった。
以下ネタバレが含まれますのでご注意ください。
タイトル「ムゲンのi」の意味
主人公の愛衣は、祖母から教えてもらった"マブイグミ"という方法でイレス患者を覚醒させようとします。
これは、愛衣や祖母のように超能力を持つ者が特定の呪文を唱えることで、昏睡状態の人の夢(=夢幻の世界)に入り込み、そのマブイ(魂)に寄り添い解放するという方法。
つまり、イレス患者を覚醒させるためにそれぞれの夢幻の世界でその魂を救う愛衣の物語、という意味がこめられています。
そしてもう1つ。
23年前に少年Xが起こした通り魔殺人事件で、愛衣は目の前で母を失います。
そのことで大きな心の傷を負った愛衣ですが、父や祖母、そして猫のきなことうさぎのハネ太という愛情深い家族の支えによって立派に成長しました。
愛衣がイレス患者3人の夢幻の世界での冒険を乗り越え、それぞれの魂を解放し、自らの傷とも向き合う強さを持てたのも、家族の温かい支えがあったからこそ。
そんな「無限の愛」という意味もこのタイトルに込められているのかな、と読みながら感じました。
前に進む強さ
本作を通じて愛衣が手に入れた一番大切なもの、それは心の強さだったのだと思います。
脳裏に袴田先生の笑顔が浮かぶ。彼に対する怒りも、憎しみも、嫌悪も、なぜかいまはまったく感じなかった。私からママと父さんを奪い、そして私の心を弄んだ人物だというのに。
どうして私は彼を赦せたのだろう。そのことが少し不思議だった。
引用:下巻352ページ
憎しみを持ち続けることが悪いことでもないし、なんでも赦せることが良いことでもありません。
ただ、愛衣は実際に起きた出来事と自分の気持ちや全ての思い出に真正面から向き合い、どういう気持ちで今後を生きていくのかを自ら決めることができた。
そのことが愛衣の心の強さなのだと思います。
愛衣ほどのトラウマでは無いにせよ、日常で何か辛いことや嫌なことが起こると「あの頃に戻りたい」と、時間を巻き戻す思考になりがち。
でもそんなこと実際には不可能。
だったら私は未来志向でいたいな、とこの本を読んで思いました。
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*1:実際にはこうした病は無いですが、日中無性に眠気に襲われるという似たような病は存在するようです