Disney+で配信している『ジ・アメリカンズ』。
ちょうど10年前、2013年に始まったこのシリーズ、ついに最終シーズンまで完走しました。
(c) 公式サイトより引用
アメリカ人を装い暮らしながら諜報活動を行うソ連のスパイの夫婦を描く作品。
ウクライナ侵略で国際的にも大きな批判を浴び続けるロシア。
そんなロシアがアメリカと冷戦を繰り広げていた時代を描く作品です。
元CIAの人が作品に携わっているということもあり、全シーズンを通じてかなりリアリティが追求されていました。
スパイの作品というと、派手なアクションを思い浮かべますが、本作はそうした派手さはありません。ミッションを通じた緊張感や政治的なかけ引き、スパイやFBI捜査官たちの複雑な内心を描くのがメインなので、どちらかというと地味な作品。
それでも、とても印象に残る面白さでした。
『ジ・アメリカンズ』シーズン6
— Rio (@nami11star1) 2023年8月17日
ついに最終シーズン。
物語の設定的にある程度予想していたけれど、やっぱり最後は一気に見ちゃうし、切ないし…納得のラストではあるけれど、考えさせられることも多く、しばらくロスを味わうことになりそう😢 pic.twitter.com/9m5oYG8oyv
以下ネタバレが含まれますのでご注意ください。
ゴルバチョフと冷戦の終わり
最終シーズンでは、アメリカとソ連の対立よりも、ソ連内の混乱が際立っていました。
西側諸国と協力し、冷戦を終わらせ、ソ連をより良くしようとしていたゴルバチョフ。
当然、そんな彼の方針を面白く思わない一部の集団がいます。
シーズン6では、KGB*1の中でゴルバチョフの暗殺を企てる集団と、それを阻止しようとする人たちの駆け引きがメインでした。
ゴルバチョフ元大統領は、すごい歴史上の人物という印象でしたが、お亡くなりになったのはちょうど1年ほど前の2022/8/30。
史実でも、ゴルバチョフ氏は核軍縮や東西冷戦の終了を実現させ、国際社会の平和と安定をもたらすという非常に大きな功績を残しました。しかし、ロシア国内では彼への評価は分かれており、ドラマと同様、あまり快く思わない人たちも一定数いるとのこと。
シーズン6では、
- ゴルバチョフ暗殺を食い止めたいフィリップ
- ゴルバチョフ暗殺に加担するエリザベス
と、夫婦がそれぞれ異なる立場から活動することになります。
スパイの存在意義
「良いスパイとは?」というのも、このシーズンで描かれていたポイントの一つです。
命令されたことを抜かりなくこなすスパイ
それだけ聞くと、とても理想的で素晴らしいスパイだと感じます。
まさに、シリーズ後半までエリザベスがそのようなスパイでした。
ですが、
「なんのためにそんなことをするのか?」
「それって、自分がすべきことなのか?」
と、自らの頭で考えて、判断して、行動すること。
スパイに限らず、人間として最低限の権利ではないでしょうか。
エリザベスも、上司であるクラウディアに疑問をぶつけても、
「良いから、これをやりなさい」
「あなたはただ実行すれば良いのよ」
「余計なことを知る必要はないわ」
と、任務の全体像や自分が担う役割を全ては教えてもらえません。
そして途中までそんな状況も当たり前だと思い込んでいました。
(c) 公式サイトより引用
でもそれって、スパイに限らず今の私たちの生活にも垣間見えると思いませんか?
- 仕事で、上司に「とりあえずこれやっといて」と言われる。
- 親から、「つべこべ言わずにこれをやりなさい」と怒られる。
とてもあるあるな光景。
しかもこういう機会が重なるたびに、それが普通と錯覚してしまいがち。
でも、一度しっかりと立ち止まり、自分の中の納得感とか意思と向き合うことが大事ですね。
どうなるジェニングス一家
最終シーズンということで、フィリップとエリザベス夫妻と子供たちがどうなるのか。
正直、予想していたよりはいい結末で一安心。
特にフィリップとエリザベスは、スパイ活動の中で命を落とすんじゃないかとハラハラしていましたが、無事(?!)ソ連に戻れたのは良かった。
(c) 公式サイトより引用
特殊な二人だけれど、二人の間に強い絆があることは間違い無いと思うので、夫婦として穏やかに暮らしていければ。
ただ、子供たちはアメリカにいて、もう2度とアメリカの土地に足を踏み入れることはできないと思われるので・・・このまま家族がバラバラになってしまうのかな。
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最後まで良く分からなかったのはペイジ。
教会の活動に熱心に取り組んでいたと思ったら、両親のスパイ活動を本気で目指すようになり、なのに最後はアメリカに残る選択をして・・・
ロシアのスパイとして生きる覚悟がなかったということなのかな。
単に、両親の愛情不足で、より近くにいるためにスパイ活動をしていただけ、とか?
(c) 公式サイトより引用
シーズン最終話、アメリカから逃亡してロシアに向かうフィリップ、エリザベス、ペイジは、国境近くでマクドナルドに立ち寄ります。
実はロシアにマクドナルドが進出するのは1990年1月。
つまりこの時点ではまだロシアにはマクドナルドはありませんでした。
ちなみにウクライナの侵略行為を受け、2022年にマクドナルドはロシアから完全撤退します。
アメリカで生まれ育ったペイジにとって、ソ連はあまりに文化も習慣も言葉も政治の仕組みも宗教も違う、まさに異国の地。ロシアに行って後悔してもアメリカには戻れなかっただろうから、ギリギリで気付いて良かった、といえば良かったのかもしれないけれど、これまではなんだったんだろうと少し思ってしまいました・・・。
子供たちとは恐らく2度と会えず、ソ連も崩壊する未来で、ジェニングス夫婦はどのように生きたのでしょうか。
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*1:ソ連の諜報機関